経営者に万が一のことが起こってしまった時、経営における影響が中小企業では特に大きく、
たちまち経営が立ち行かなくなることも多いのが現実です。その時苦労されるのは残されたご家
族や従業員の方です。
大きな震災もあり、リスク意識が高まる中、経営者ご自身のリスクに対しては、『自分は大丈
夫』という感覚が頭の片隅にあり、対策が不十分なケースが多いように感じます。実際には、『万
が一』という可能性の低いリスクへの対応より優先して対応すべき課題を多く抱えておられる結
果、なかなかご自身のリスクまで対応できていない、というのが経営者の皆様の実状でしょうか。
事業を行う上で金融機関からの融資は不可欠です。
不幸にも万が一の事態が発生し、融資の返済ができなくなった時、融資の返済義務はご家族(相
続人)に引き継がれ(相続され)ます。
これは、個人事業で経営者本人が債務者となっているものはもちろんのこと、法人が債務者とな
っているものでも、代表者が個人保証している融資は代表者のご家族に引き継がれることになり
ます。
法人の資産から返済が可能であれば問題ありませんが、それでもその資産が不動産などであれ
ば、売却を急ぐ必要から交渉を優位に進めることが難しくなる可能性も出てきます。
相続放棄を選択すれば、債務の継承は免れますが、ご自宅を含むすべての財産を引き継ぐ(相
続する)権利も失うことになってしまいます。
準備をしていなかったばっかりに、残されたご家族の住まいをも失ってしまう結果となります。
このようなリスクには、法人契約の生命保険を活用して準備するのが一般的です。
個人の借入はいくらあるのか、代表者が個人保証している借入はいくらあるのか、資産からいく
ら返済が可能かなどを整理し、不足資金を把握したうえで、不足部分を保険でカバーすることに
なります。保険料というコストのかかる話ですので、状況によっては、すぐに全額のカバーは難
しい場合もあるかもしれません。そのような場合、まずは状況を把握し、最低限の部分のみカバ
ーすることを検討することになります。
一旦、保険での準備をしても、事業を継続する中では融資の額は増減します。
減少の場合には保障を減らして保険料の削減をする。増加の場合には保障を増やすことを検討す
るなど、定期的に準備状況の確認と保険の見直しを継続していくことも重要です。
また、最近では『生きるリスク』への準備も注目されています。
ガンなどの高度先進医療を受けるための医療費や、一命はとりとめたものの重度障害となった時
に保険給付を受けられる保険などがそれにあたります。
残されるご家族に無用な不安や負担を残さないよう、準備を検討されてみてはいかがでしょうか。
(文責 藤村 祐司)