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≪月刊『タックスニュース』8月号≫第33回 ~法人税率引き下げの裏で議論されていること~赤字法人などでは増税の可能性も!!

2014/08/15 カテゴリ:タックスニュース

 すでにテレビや新聞のニュースでご存じの通り、6/24に閣議決定された『骨太の方針』に、『現行35%程度の法人税実効税率を数年で20%台(20~29.9%)に引き下げることを目指す』と明記されました。このニュースを見て、「自社の法人税負担も減る」とお考えになられた経営者も多いと思いますが、実際はどうでしょうか。
 結論としては、実効税率の引き下げにより減税の恩恵を受けるのは、大企業と優良企業が中心であり、年間所得(利益)800万円以下の法人(赤字法人も含む)には逆に増税の可能性もあるということになります。以下でもう少し詳しく述べていきます。

 まず、現行の35%という実効税率ですが、これは法人税25.5%、住民税20.7%、事業税7.55%として、所得(利益)に対する合計税率を表しています。ただし、住民税は課税対象が所得(利益)ではなく法人税であり、事業税は経費になるため、各税率の単純合計は35%にはなりません。
 上記の各税金ともに所得(利益)が一定額以上を超えると税率が2段階もしくは3段階で上がるようになっていますが、上記の税率はその最高税率で算定されています。
 年間所得(利益)800万円の法人の場合の現行税率は、法人税15.0%、住民税17.3%、事業税4.0%で、実効税率を算定すると20.76%となります。
 骨太の方針の目標である29.9%をすでに大きく下回っており、更なる税率引き下げの可能性は低いと思われます。

 次に財源の問題です。実効税率の引き下げによる減税分の財源をどこで捻出するかが、政府税制調査会で議論されており、その一つの方法論として『外形標準課税の適用拡大』が挙げられています。
 『外形標準課税』とは、現行1億円以上の資本金の企業のみを対象として、資本金額、支給給与総額、支払家賃額など、会社規模と関係が深いと思われる項目を対象に課税される事業税の一種で、この適用対象を広げることが議論されています。適用対象となれば、所得(利益)の額に関係なく税額が発生しますので、赤字法人でも課税されることになります。

 中小企業の中には、法人税率引き下げの恩恵は受けられず、減税の財源確保のための増税負担だけを強いられることになる法人も多いと思われます。
 あくまでも、現段階での政府税制調査会の議論の内容であり、各方面からの強い反発も予想されますので、実現については不透明な状況ではありますが、年末の税制改正大綱の発表まで、議論の行方を慎重に見守っていく必要がありそうです。     
(文責 藤村 祐司)